油紙を使用したインスタレーション作品でも知られる美術家・小林雅子による展覧会。ギャラリーHANAでは2回目の個展となる。今展では、小林自身が感銘を受けた本をテーマとした、立体作品を展開させる。素材には出来うる限り実際に読んだ本を使用し、小林の印象を通した本の世界観を表現する。作品として再構築された「本」は、美術として新たな物語をつむぎ出します。
下北沢にお越しの際は、是非、ご高覧ください。
「朧げな記憶を辿ると、子供の頃から、絵を描くこと同じぐらい本を読むことが好きでした。お気に入りの話は何十回と繰り返し読み続け、その物語の世界に入って行くことが出来るようになっていました。
「アート」と「読書」。その二つは今でも私の生活のそばに、ずっと寄り添っていてくれています。だからお気に入りのあの物語の世界観を、本を直接加工して表現することにしました。これは私の見ている世界です。もしかしたら、あなたの知っている物語とは少し違うかもしれません。でも、私の物語にぜひ触れてください。その中に、あなた自身の新しい大切な物語を発見するために。」小林 雅子
小林雅子がつくる作品を振り返る時、かつて彼女が身に付けたかもしれない衣服や身のまわりのモノたちが、油紙を素材に、琥珀色の皮膜となって光をまとう姿が思い起こされる。この皮膜は、記憶などが宿る意識の内側と、現実の世界とが接して互いをつなぐ境界にもなっている。既成の本をもとにした小林によるブック・オブジェの数々も、他の作品と同じく、心の内のものたちが現実の中でかたちを持つための役割を担っている。
素材となった本に記された物語やことばが見せるさまざまな世界は、読書を通して彼女の意識の中の記憶や思いと混ざり合い、そこには新しい物語やことばが生み出される。それらを自分だけの声として現実の世界に戻し、人々と対面させる試行錯誤の中で、ページを切り刻み、それぞれの本を象徴するかたちに造形化する制作が行われてきたように思われてならない。そして、そこに現れたものは、「本」という名のもう一つの皮膜の姿でもある。
篠原 誠司(足利市立美術館学芸員)
画像作品:ウラジーミル ナボコフ著[Lolita]ペーパーバック版、針金
小林 雅子 / Masako Kobayashi WEB: http://kobamasa.jp/
沖縄県立芸術大学 大学院修了
2018年 個展「物語、の森の中へ」 (ギャラリービョルン/岡山)
足利アートクロス「CON展」参加 (足利市市街地/栃木)
個展「永遠の断片、そのための物語」 (ギャラリーHANA/下北沢)
「仁川芸術騒動 300プロジェクト」参加 (仁川文化財団アートプラットフォーム/仁川)
2017年 個展「あなたのために用意された物語」 (天王洲セントラルタワーアートホール)
「美術館の本棚」 (足利市美術館/栃木)
「金谷芸術特区」参加 (富津市金谷/千葉)
2016年 「冬の王国」 (サロン・ド・ヴァンホー/倉敷)
「Wear the Art!!」 (ルミネ有楽町/東京)
2015年 「残ル身体」 (E&Cギャラリー/福井)
「スカルプチャーマップ」 ( 蒲田リノベーションハウス/東京)
「DanDans - Une nouvelle génération d’artistes japonais」(Maison de la culture du Japon à Paris・Gallery BOA/Paris)
「美術館の本棚」 (足利市美術館/栃木)
「Xiang」 (日中友好会館美術館 /東京)
2014年 「Thinking of ENERGY」 (German Federal Foreign Office/Berlin)
「土庄 Art Project 2014 」 (戸形公民館/香川)
2013年 「Dandans,a collective of emerging Japanese artist 」 (Browse & Darby Ltd/London)
「土庄 Art Project 2013 」 (東洋紡記念館/香川)
「ふくやまArt Walk 2013」 (福山文学館 /広島)
「Otaru Book Art Week 2013」 (cafe NAHANA/北海道)
「えねるぎぃ ふぉ あす」 (ヒルサイドフォーラム /東京)
「美術館の本棚」 (足利市美術館/栃木)
2011年 「会津・漆の芸術祭」参加 (喜多方市内/福島)
「Hierher Dorthin」 (ドイツ文化会館/東京)
2010年 「Artists' Book Exhibition : Centre to Periphery 」 (Japan Creative Centre/シンガポール)
「no man’s land」 (旧フランス大使館別館/ 東京) 2009年
個展 「その在処を探して」 (フリュウ・ギャラリー /東京)
「真夏の夢」 (椿山荘庭園/東京)
2008年 個展 「記憶という事についてのすべて」 (フリュウ・ギャラリー/東京)
「THE HOUSE」 (日本ホームズ住宅展示場/東京)
2007年 「斑尾高原げーじゅつ祭」参加 (斑尾高原山の家/長野)
2006年 個展 「個人的記憶博覧会」 (ギャラリーあと・いず/東京)
「THE LIBRARY」 (足利市美術館/栃木・多摩美術大学美術館/東京)
「彫刻の五七五」 (那覇市民ギャラリー/沖縄)
2005年 「Amo la vita」 (パーソナルギャラリー地中海/東京)
2004年 「ABOVE THE BOOK」 (Gallery ART SPACE /東京)
「collaborators / The second contact」 (Gallery ART SPACE /東京)
2003年 個展「2002.6.9/2003.6/14 不特別な日々」 (ギャラリィK/東京)
2002年 個展「絶対的な記憶」 (ギャラリィK/東京)
2001年 個展「私たちは昔、子供だった」 (旧遠矢産婦人科/鹿児島)
企画個展-それぞれの他者- 「でも、僕たちは前に進むんだ」 (ギャラリィK/東京)
個展「あなたの羽衣、あなたのヌケガラ」 (曽木の滝公園/鹿児島)
2000年 大口市アーティスト・イン・レジデンス参加
個展「布団から旅に出る」 (那覇市民ギャラリー/沖縄)
個展「昨日のヌケガラ」 (ギャラリィK/東京)