私はこの作品の中で、「窓の外を見るということ」 について考えています。
私たちは、それぞれになじみの窓をもち、なじみの風景を見ています。
私は、私以外の人々が、そこに何をみているのかを知りたいと思っています。彼らがその生活の隙間に、ふと中空に視線を止めたり、窓の外を眺めやるときのことを想います。
私たちは、何かと何かが隔てられてはじめてものを考える。窓というのは、過去と現在、あなたと私、内と外、そんな隔たりをつなぐ通路でもある。
写真というイメージそれ自体も、私たちが持つたくさんの窓の一つ。だから写真家は、“窓”を撮るのではなく、“窓辺”に佇まなければいけない。
私が目指したのは、私とあなたが同じ一つの地点に立ち、景色を眺めるような行為です。
作品は全て、バライタ紙にgelatin silver print | 1段目 「木」 2020、2段目「テラス」 2018、3段目左「ユーカリ」 2020、3段目右上「ブロック」 2019、3段目右下「柳町亜紀子」 2020、4段目上 「外気舎」 2018、4段目左下 「フェリー乗り場」 2019、4段目右下 「柳町匡俊・嶺介」 2019 新作25点を展示予定。
LIVE「外から」今成哲夫 (弾き語り)
2021年 2月21日(日)17時頃〜
電車の窓、自動車の窓、家の窓。心の窓や、社会の窓。暗い窓とか、明るい窓。新しい窓に、旧い窓。日々過ごしていると気づかないけれど、実は人の数ほど窓があって、それぞれに人を映している。カメラのレンズというのも、そういう窓だ。人の目もそうかもしれないが、カメラはそこから新しい画をつむぐ。そこには扱っている人の、手つきが見える。機械やフィルム、印画紙のもつ空気も。
小野寺さんはいっとき、世代の近い作家と企画をしながら、自分の写真を考え、発表していた。今は、写真に専念している。直情的なスタイルから、少し静かな構えで。それで生まれたテーマが“窓辺”。
彼の詩情というのだろうか、日常に見かける光景が、さまざまな陰影を持って見えてくる。この国の歴史に日常的に触れるという彼が出会った物語も織り込まれているのだろう。同じ窓であっても、そこに歴史はあり、あるいは、そんなにない。同じように見えるオジサンが、それぞれ異なる生活を過ごしてきたのと同じだ。
窓の中には、何があるのか。あるいは外はどうか。あるいは、窓なのか、そうじゃないのか。窓のことを考えると、日々は陰を深め、豊かに映る、肌触りは、どこまでも広がる。やがて、窓であることを忘れる。
それは、記憶の窓辺に立つことかもしれない。
(edit & text 大沢 景)
artist Profile小野寺 南 / Minami Onodera Minami Onodera hp: https://onoderaminami.pb.online/
1983年岩手県生まれ、写真家。2009年11年、企画ギャラリー「明るい部屋」を主宰しながら活動。同ギャラリーのほか、TAP Gallery、mujikobo等で個展を開催。グループ展多数。 写真集『前期』(発行:A組織)を2013年にリリース。
Performance by 今成哲夫
シンガーソングライター。バンド「風の又サニー」や「アナップル」等の活動でも知られる。最近はピアノにも凝っている。今成哲夫『Hawaii』| https://youtu.be/GzRbfjUCxYI